2020/12/10 許すということ 最終章

昨日、朝、ずっと吐き気で苦しんだ。

空気が、しんどかった。

美しさを放棄し、醜さに身体を委ねた人が、

昨日より増えたことを、空気で感じ取ったからだ。

私が放棄するかもしれなかった美しさを、私じゃない人が自ら手放した。

弱いと、生まれ持った美しさを信じることができない。

弱いと、醜さというジャンクなものに病みつきになる。

でも、弱い人を一体どうしてこれ以上責められようか。

責めないでほしい。

命を...

たとえ、同族を殺した命でさえも。

責めないでほしい。

死に追いやられてゆく人の瞳に、誰かを殺しかけているあなたの姿がうつる。

 

 

 

私が何を言っているか、わかりますか?

私の声がきこえますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと、怯えていた。

私の頭を撫でてくれる人はいなかったから。

ずっと、苦しかった。

私の体は私のものではなかったから。

私を抱きしめてくれる人は、見返りに何か望むものがある人たちだった。

本当の意味で私を抱きしめてくれる人はそんなもの期待しないのに。

マガイモノの大人たちは、無数に存在する。

マガイモノの大人たちは、永遠に満たされないものを欲して、若い宝物を汚す。

そして、宝物をマガイモノにしてしまう。

マガイモノの大人たちが、私を勝手に解剖して、私はズタズタになった。

神経は壊れ、筋肉は裂けた。

痛みなんて、もう、慣れた。

もう、おわりだと思った。

血溜まりができるのは日常だった。楽にしてくれ。いっそ、殺してくれ。

ただ、時間だけが、虚しくすぎて行った。

何も感じなくなる。時間だけを感じる。

「拷問にどれだけ耐えることができるか」という職業があったのなら

私こそが一位になると思った。

早くみんなのとこに行きたかっただけなのに。

なのに、気がついたら、私の体は発火していた。

火達磨になって、みるもおぞましい姿に変貌した。

みんな、泡を喰ったように、しっぽを巻いて、逃げていった。

あなたは私を殺そうとした。

あなたが私を殺そうとした。

あなたも私を殺そうとした。

私も私を殺そうとした。

 

なのに、どうして、私はまだ生きているのか。

どうして、まだ、生きなきゃいけないのか。

こんなにクソッタレな私が、なぜ、生かされているのか。

そんなことに意味はないと言う人はいるけれど、

たまたまも、偶然も、必然も、本質の意味は、

共通の意味を持つことを、どういうわけか、知っている。

 

解くのが難しい悲しみが降り積もった。

それは強烈なまでに美しく見えるみたい。

強烈なまでに醜いものは。

そしてまた、それを持たない人の餌食になった。

 

ずっと、許すということについて、

何年も、何年も、何年も、何年も、考え続けてきた。

いろんな人に、許すということはどういうことなのか、教えてもらった。

 

だから、これからは、私の言葉で話す。

 

痛いよ。苦しいよ。辛いよ。死にかけたよ。

あなたのせいで。

あなたはそれは自己責任というけれど、

それはあなたが自分を守るための卑怯な言い訳だよ。

でも。

許すよ。

いいよ、許すよ。

許されたいなら、許すよ。

私だから、許すよ。

でも、他の人にやったら、許さない。

過去を消す技術は、まだない。

五色の舟があればいいね。

そんなことを夢みたりなんかして、

本当にあったら結局のところ使わないんだ。

 

私がいくら許したとしても、あなたが犯した罪はそこにあり続ける。

何も変えることはできない。

私は、私がしたことを許されたいから、あなたを許すのではない。

私は、私がしたことを、許さない。

 

 

それでも。それでも、私はあなたを許すよ。

それであなたが救われるなら。

私はあなたも愛している。

 

私はあなたのことが嫌いだけれど、好きじゃないけれど、

憎んではいない。かつて、憎んでいたけれど。

もうそんなもの、手放した。

愛してる。

あなたは嫌かもしれないけれど、

私はあなたを愛している。

 

ただそれだけ。