2021/04/24 アップリンク渋谷閉鎖に思ふ

アップリンクは大好きな映画館の一つだ。

何より配給作品が多種多様でリベラルなものが多く、

こういう映画を沢山日本に配給してくれているということが嬉しかったし、

沢山の作品を見て実際に救われてきたということも事実としてある。

また、数年前に開館した吉祥寺も素晴らしく、

深いブルーの美しい内装にも配給作品にもとても感動した。

初めて吉祥寺に行った時に『ナディアの誓い』を見た。

そのあと、売店で売られていた『私で最後にするために』という本を買った。

読んで分かったことが沢山あって、年の近い女性がほとんど全てを失って、

国際社会に対して問題提起をするのがどれだけ辛いことなのか、

それを一生背負っていかなければいけないのはどれだけ重いことなのか、

そういうことを考えた。

 

仕事量から考えて、現場のかたはほとんど寝てないのだろうとも思っていた。

一年中働きづめで、過労だということも何となく察していた。

だからこそ、これ以上状況が悪くなったりすることが嫌だったし、

絶対に無くしてはいけない映画館だと、

率先してアップリンクへ足を運んでいた。

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だから、ハラスメントの問題が浮上した時のショックが大きかった。

沢山素晴らしい映画を配給していた人が、その過程で部下に素晴らしい映画とは反するような行動をとっていたということが信じられなかった。

配給される映画から、そこで働くかたの信念を感じていた。

ウェブサイトから、途絶えることのない熱意を感じていた。

感じるものが映画以外にある会社だったから、大好きで、応援していた。

憧れの人だった。

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ハラスメント発覚後、ショックでそれ以来行けなくなった。

自分の行くという行為さえもハラスメントに加担する気がして。

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こうも考えてみた。

昔は24時間働けますかというコピーがあるくらい、オーバーワークで、

上司の言うことは絶対みたいな環境が当たり前だったのではないか。

そういう所で生き抜いてきた人は、やはり私たち世代の人の感覚とはかけ離れているだろう。

ひと回り離れている人事部の友人が「あなたぐらいの人は就活の質問で、完全週休2日制かとか、福利厚生がしっかりしているかとか、そういうことばかり聞く。わたしの世代は、いくら稼げるか、稼ぐためには土日も働きます、みたいなことを言う人が多かった。」ということをよく言っていた。

とはいえ、昔と今は違う。昔は通用したことが、今は通用しないのであれば、

変わるべきなのだと思う。

 

渋谷は映画館が最も多く残っている大切な街だ。

文化の中心の街で、とても大きな大切なものが無くなった。

 

 

大好きで、大好きで、何度も通った映画館。

笑ったり、泣いたり、沢山考えるきっかけをつくっていただいた。

今までの感謝とともに、ハラスメントが改善されますように、と祈っている。